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檸檬(レモン) [記憶]

2月は、大学入試のシーズン。
朝の通勤時に、乗換駅で多くの受験生に遭遇したことを昨日のことのように思い出す。
一様に大きめなバッグを提げて、硬い表情をしていた。
これは、いつの時代にも共通する受験生のスタイル。
それでも、大学近くのコンビニで買物をする列を見ると、時代が変わったことを実感させられる。

受験。そして、大学生活。
過ぎてしまえば懐かしさで溢れてしまう日々に、つい思い出すメロディがある。

私花集〈アンソロジイ〉

私花集〈アンソロジイ〉

  • アーティスト: さだまさし, 渡辺俊幸, Jimmy Haskell
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2005/02/23
  • メディア: CD

♪喰べかけの檸檬聖橋から放る
快速電車の赤い色がそれとすれ違う
川面に波紋の拡がり数えたあと
小さな溜息混じりに振り返り
捨て去る時には こうして出来るだけ
遠くへ投げ上げるものよ
            ―さだまさし作詞・作曲『檸檬』より

彼のファンでもなんでもないけれど、この歌詞には惹かれるものがあった。
聖橋を望む、お茶の水駅界隈は、古くから学生街として知られている。
私の大学はここにはなかったけれど、卒業後、出版社に勤める友人を訪ねて何度か降り立った。
改札口を出てすぐの交差点を学生に混じって渡る時、決まって感傷的な気持ちに襲われるから不思議だった。
この歌のせいだったかも知れない。

『檸檬』に連動したかのように、駅近くに「LEMON」という名前の画材屋があった。
やがて同じ名前の喫茶店もお目見えした。
この歌を意識しながら、店を覗き、お茶を飲んだりもした。
その後しばらく経って訪ねると、記憶していた「LEMON」の文字は辺りから消えていた。

私にとっては、学生時代を彷彿とさせる、『檸檬』の歌詞とメロディ。
この時期になると、決まって思い出す風物詩。

※ 追記
大好きな詩人、茨木のり子さんが亡くなった、とのニュースが流れた。
享年79歳。
「戦後の女性詩人では最も重要な方でした。姿勢が常にキリッとしていて、決して時代に安易に即応しようとはせず、現実にまっすぐに立ち向かっていました」(2月20日付「朝日新聞」より)
この大岡信氏のコメントが、彼女をあますところなく語っていた。
彼女の『わたしが一番きれいだったとき』や『自分の感受性くらい』が好きだった。

ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて
気難かしくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親者のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮しのせいにはするな そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を 時代のせいにはするな わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ

                   ―茨木のり子『自分の感受性くらい』より

この時期に思い出す、悲しい出来事になった。

自分の感受性くらい

自分の感受性くらい

  • 作者: 茨木 のり子
  • 出版社/メーカー: 花神社
  • 発売日: 2005/05
  • メディア: 単行本

《きのうの陸》

       
           陸もビジネス誌を読む?

 ※ 補足
       
           実は、ビジネス誌を噛む?


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コメント 20

チヨロギ

通勤で毎日御茶ノ水駅を通ります。
高校時代も乗換駅だったので、ずいぶん長いつきあいです。
夜の聖橋はライトアップされていて美しく、毎日見ても飽きません。
LEMON画翠も、たまーに利用しますよ~。
あの店の大きな袋を抱えた学生さんらしき人たちも、
お茶の水界隈に欠かせない要素かもしれませんね。
by チヨロギ (2006-02-20 23:46) 

knacke

難しい顔の陸君ですね。
相当、厳しいビジネスの話だと察します。(笑)
学生時代、もっと楽しめばよかった・・・。
と、思いつつ、戻りたいとは思わないワタシでした。アハ。
by knacke (2006-02-21 04:43) 

misso

入試で地方から上京してきたと思われる若者を見ると、
意味もなく泣きそうになるだよ・・・。
↑きむたこちゃんと同じく学生時代には戻りたくないのだった。
貧乏だったから(泣)。
by misso (2006-02-21 08:25) 

わやや

大学の街京都もいつもながら学生さん一杯いてはります。またいろんな所から来はるんやろな。陸ちゃん、やりますね。混迷を極める日本経済の動向に沈思黙考してはる陸ちゃん。まるでサミュエルソン先生みたい。うひゃ。
by わやや (2006-02-21 08:54) 

捨て去る時はできるだけ遠く・・・・心にきますね・・・
陸ちゃんがホールドしているのはやはりPPなのでわ・・・(^_^)
by (2006-02-21 10:59) 

ハイジ

通勤先が御茶ノ水です。
でも、水道橋駅で下車して歩いているので聖橋は久しく見ていないです。
夜ライトアップされて綺麗ですよね。
陸もビジネス誌を読む?・・・うぅーん、微妙ですね。
私には、ビジネス誌を無視しているようにも見えますが・・・。
眠かったのかな?かわいいですね。
by ハイジ (2006-02-21 12:58) 

masiko

私も今朝、朝日新聞で訃報に接しました。
とても残念です。
さだまさしの「檸檬」の入ってるLP(古)持ってます。
檸檬と言うと梶井基次郎のほうが浮かびます。
丸善の洋書の上のレモンがね。
画材屋さんは買えないけど高校生のころ
よく行きました。あの界隈はちょっと私の青春です。
by masiko (2006-02-21 19:32) 

きす

大学に行かなかった事を今更ながら後悔します。でも今からでも出来る勉強はしたいなぁ~と思います。(娘に教わるw)
by きす (2006-02-21 21:01) 

柴犬陸

茨木のり子さんの訃報に接したことで、この記事を書きました。
下書きの段階でも、公開してからも、何度か追加・訂正して、まとまりのない文章になってしまいました。
どう書いたら良いのか、少なからず混乱しました。
そんな中で、皆さまにコメントを寄せて頂き、nice!を頂き、本当に有難うございました。
by 柴犬陸 (2006-02-22 01:41) 

柴犬陸

☆チヨロギさん
「LEMON画翠」というのですね。
私の記憶にあるのは、黄色と黒の「LEMON」の文字です。
なんども探したのに、あったはずの場所に見つけられなくて。。
記憶違いなのか、自信がありません。

☆きむたこちゃん
陸はこうした雑誌の包装紙ポリプロピレンが大のお気に入り。
読む前に素早く獲られてしまいました。

☆missoちゃん
私も受験に上京したクチです。
あの時の不安な気持ちは、たとえようもありません。
泣きそうになるかも。

☆わややさん
そうですね、京都も名だたる学生街ですね。
私の姪も京都の大学に通っています。京都出身じゃないけど。
陸はなんだかエラソーに写ってますが、実態を追加で載せました。
サミュエルソン先生になれなくて、ゴメンナサイ。

☆toucoさん
『檸檬』の歌詞は、いろいろと語ってくれます。
ついつい、捉われてしまいます。

☆ボニピンさん nice!有難うございます。

☆ハイジさん
ライトアップされた聖橋、久しく見ていません。
見たらまた、感傷的になりそう。

☆masikoさん
さだまさしの『檸檬』は、梶井基次郎の同名小説をイメージしている、と最近になって知りました。
丸善の洋書の上にレモンを置く、小説の『檸檬』が、歌では聖橋から投げ上げるレモンになって。。
masikoさんは過去記事で、茨木さんの『自分の感受性くらい』を取り上げておられましたね。。。

☆きすさん
きすさんを見習いたいです。
お嬢さん頼もしいです。
by 柴犬陸 (2006-02-22 02:02) 

柴壱

多くの大学が郊外に移転したり、入試方式も○○推薦とか多様化して、
昔ながらの悲壮感漂う受験生の姿って、あまり見かけないかと思ってました。
でも、学生の街お茶の水には、そういう風景、残ってて欲しいですね。
さださんの「檸檬」は、二番に「各駅停車の檸檬色~」という歌詞が出てくきて、この対比が、お茶の水っぽくて、とても好きです。
by 柴壱 (2006-02-22 12:51) 

お茶の水、少しだけふらついたことがあります。やっぱり、学生街ってイメージですね♪
学生時代に、大学の目の前にあるコンビニでバイトをしていたのですが、
入学試験の日に来る学生の不安げな表情を思い出します。
今、ちょうどその時期ですよね。
ガンバレ〜と、ガンバレおじさんのように、声援を送りたいですね!!
by (2006-02-22 23:58) 

柴犬陸

☆柴壱さん nice!有難うございます!
『檸檬』は、お茶の水駅を通る列車が背景にあって、状景があざやかに浮かびます。レモン色の電車は、柴壱さんの地元に繋がっているのでしたね。

☆ぽちママさん nice!有難うございます!

☆satukiさん nice!有難うございます!
ガンバレおじさん、本当にこんなときに来て欲しいですね。
by 柴犬陸 (2006-02-23 00:43) 

BAKU

茨木さんの存在、亡くなるまで知りませんでした。
なくなった日のニュースをみて『自分の感受性くらい』を見て読んで聞いて
すごく新鮮でした。
最初は思わず反発しそうになったんです。
「自分の感受性を社会のせいで守れなくなる人って確かにいる。貴方が社会のせいで打ちのめされたとき、彼らと反対で感受性を守れますか」って反発しかけた。
でも、やっぱり最後は自己責任。これも分かってたつもりです。
最後の『ばかものよ』ってことばです。どんなにつらくとも、負けてしまえばばかものなんだ。そう心から思いました。
茨木のり子さん、この場を借りてお礼申し上げるとともにご冥福をおいのりします。
by BAKU (2006-02-24 23:47) 

柴犬陸

☆fumilinさん nice!を有難うございます!

☆BAKUさん nice!有難うございます!
茨木のり子さんは、分かりやすい詩を書くことを心がけていた、と知りました。
詩の捉え方は各人各様でしょうね。
それにしても、「ばかものよ」は強烈な言葉です。
かつて反発したこともありました。
by 柴犬陸 (2006-02-26 01:42) 

U3

 LEMON画翠って30年前くらいから知っていますから(年が分かっちゃうねぇ)とても古い画材店ですよね。喫茶店(いまはレストラン)は現在では、駅前から駿河台下に向かって一つめの信号の右に曲がって150Mくらい行った左側にあります。廻りは左手手前が明治大学、右手が駿台予備校2号館その先は病院です。
 知ったかぶりをする積もりはないので告白いたしますが、わたしは茨木のり子さんを知りませんでした。浅学ですみません。でも柴犬陸さんのブログに載っていた詩をみて率直に「いいな」と思いました。ストレートに伝わるものがあったからです。
by U3 (2006-03-07 11:35) 

柴犬陸

☆ブラウンパパさん
連続のご訪問、そしてnice!有難うございます!
私も、年が分かっちゃうと思いますが (笑)
LEMON画翠の場所を教えて頂き、有難うございます。
ぜひぜひ訪ねてみたいと思います。
ところで、茨木のり子さんですが、詩人としての立場を考えるとそれほど世間には知られていません。
私が知ったのも、友人が彼女を好きだったからに他なりません。
どうか浅学などと思わずに。。
by 柴犬陸 (2006-03-07 15:55) 

miho-rin

茨木のり子さんのこの詩 とても素敵ですね 
ずーんと心に響きました。
今度 TBさせて頂きたいですが 良いですか?
檸檬… 懐かしいなぁ 
結構 好きだったんですよ♪
by miho-rin (2006-09-05 10:24) 

柴犬陸

☆みほさん こちらにもnice!有難うございます。
茨木のり子さんは、昔から大好きな詩人です。
亡くなってしまって、もう彼女の詩が読めないと思うと。。どう表現していいか。

ぜひTBして下さい。
by 柴犬陸 (2006-09-05 11:05) 

柴犬陸

☆たろちぅちゃん こちらにもご訪問とnice!ありがとうです。
by 柴犬陸 (2007-10-21 22:57) 

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